オンプレミスからクラウドへの移行を成功させる5つの手順と7つの手法【完全ガイド】

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オンプレミスからクラウドへの移行を成功させる5つの手順と7つの手法【完全ガイド】

企業のデジタルトランスフォーメーション( DX )が進む中で、クラウド技術への移行は避けられない課題となっています。クラウドを活用することで、システムの柔軟性が高まり、コスト削減とリソースの最適化が可能になります。しかし、円滑な移行には綿密な計画と適切な手順が欠かせません。

この記事では、クラウド移行の全体像と、移行を成功させるための手順・注意点を詳しく解説します。
これからクラウド移行を検討しているエンジニアの方は、ぜひ参考にしてください。

メリット

  • コスト負担を軽減
  • ビジネスの変化に即応
  • 競争力を高める攻めのIT活用

デメリットと注意点

  • 問題が発生したときの相談先がいない
  • クラウドを運用する人材がいない、知見不足
  • 社内の運用・保守リソースの不足

クラウドへの移行は、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。ここでは、成功に導くための主要な5つの手順を詳しく説明します。

現状分析と目標設定

既存システムの棚卸し、ビジネス目標との紐付け、移行範囲の決定

移行戦略とアーキテクチャ設計

移行手法の選択、クラウド環境の設計(ネットワーク、セキュリティなど)

移行計画の策定

詳細なスケジュール、タスク分担、リスク評価と対策

テストと検証

機能テスト、性能テスト、セキュリティテストなど、移行後の安定稼働を確認するプロセス

運用・最適化

移行後の監視、コスト管理、継続的な改善活動

Rehost (リホスト)

「リフト&シフト」とも呼ばれ、既存のアプリケーションやシステムをほとんど変更せずに、そのままクラウド上の仮想マシン(例:AWS EC2)に移行する手法です。OSやミドルウェアはそのまま利用します。

メリット:

  • 移行の容易さ: アプリケーションコードや設定の変更が最小限で済むため、最も簡単で迅速な移行が可能です。
  • コスト削減: ハードウェアの購入や維持管理が不要になり、運用コストを削減できます。
  • 短期的な効果: 比較的短期間でクラウド移行の恩恵(スケーラビリティ、可用性向上など)を享受できます。

デメリット:

  • クラウドの恩恵が限定的: クラウドネイティブな機能(サーバーレス、マネージドサービスなど)の活用が難しく、クラウドの真のメリットを最大限に引き出せない場合があります。
  • 最適化の余地: 既存のアーキテクチャがクラウド環境に最適化されていないため、性能やコスト面で非効率が生じる可能性があります。
  • 技術的負債の持ち込み: オンプレミスで抱えていた技術的負債をそのままクラウドに持ち込んでしまう可能性があります。

Replatformリプラットフォーム )

「リフト&モディファイ」とも呼ばれ、既存のアプリケーションの主要なアーキテクチャは維持しつつ、クラウドのマネージドサービス(例:AWS RDS、ECS、Lambdaなど)を活用するために一部変更を加える手法です。例えば、オンプレミスのRDBをAWS RDSに移行するなどが該当します。

メリット:

  • 運用負荷の軽減: マネージドサービスを利用することで、OSやミドルウェアの運用・管理から解放され、運用負荷を大幅に削減できます。
  • クラウドの恩恵の享受: スケーラビリティ、可用性、セキュリティなどが向上し、クラウドのメリットをRehostよりも享受できます。
  • 開発・運用の効率化: マネージドサービスを活用することで、開発や運用のスピードが向上する可能性があります。

デメリット:

  • 変更コスト: Rehostに比べてアプリケーションの一部変更が必要になるため、移行にかかるコストや時間は増えます。
  • 学習コスト: マネージドサービスの利用方法に関する学習コストが発生します。
  • 既存システムへの影響: 変更によって予期せぬ影響が出る可能性があります。

Refactor/Re-architect(リファクタ/リアーキテクト)

概要: アプリケーションのアーキテクチャを根本的に見直し、クラウドネイティブなサービス(マイクロサービス、サーバーレス、コンテナなど)を活用するように再設計・再構築する手法です。

メリット:

  • クラウドの最大限活用: クラウドの特性を最大限に活かしたアーキテクチャとなり、高いスケーラビリティ、可用性、耐障害性、パフォーマンスを実現できます。
  • 運用コストの最適化: サーバーレスやコンテナなどを活用することで、インフラ運用コストを大幅に削減できる可能性があります。
  • 開発の俊敏性向上: マイクロサービス化などにより、開発サイクルが短縮され、ビジネスの変化に柔軟に対応できるようになります。
  • 技術的負債の解消: 既存の技術的負債を一掃し、最新の技術スタックを導入できます。

デメリット:

  • 高コスト・長期間: アプリケーションの再設計・再構築が必要なため、最も高いコストと長い期間を要します。
  • 高い技術力が必要: クラウドネイティブな設計・開発に関する高度な専門知識と技術力が必要です。
  • 移行リスク: 大規模な変更を伴うため、移行に伴うリスクが高まります。

Repurchase(リパーチェス)

既存のアプリケーションを、同等の機能を提供するSaaS(Software as a Service)やパッケージ製品に置き換える手法です。

メリット:

  • 運用・保守の不要化: SaaSベンダーがインフラからアプリケーションまで全て管理するため、自社での運用・保守が不要になります。
  • 導入の迅速化: アカウント発行後すぐに利用開始できるサービスが多く、導入期間を大幅に短縮できます。
  • 常に最新機能: SaaSは自動的にアップデートされるため、常に最新の機能を利用できます。
  • インフラコストの削減: サーバーの購入や管理が不要になるため、インフラコストを削減できます。

デメリット:

  • カスタマイズの制限: SaaSは汎用的なサービスのため、自社の業務プロセスに合わせた細かいカスタマイズが難しい場合があります。
  • データ連携の複雑さ: 既存システムとのデータ連携が必要な場合、インターフェースの構築が課題となることがあります。
  • ベンダーロックイン: 特定のSaaSベンダーに依存してしまう可能性があります。
  • ランニングコスト: 利用規模によってはランニングコストが高くなる場合があります。

Retire (リタイア)

既存のシステムやアプリケーションが不要と判断された場合、クラウド移行の対象から外し、廃止する手法です。

メリット:

  • コスト削減: 不要なシステムの運用・保守コスト、ライセンス費用などを削減できます。
  • リソースの解放: 廃止によって freed up されたITリソースを、より重要なシステムや新規開発に投入できます。
  • 管理の簡素化: 稼働しているシステム数を減らすことで、全体のIT環境の管理を簡素化できます。

デメリット:

  • 影響範囲の特定: システム間の依存関係が複雑な場合、廃止による影響範囲の特定が難しいことがあります。
  • データの移行・アーカイブ: 廃止に伴い、必要なデータの移行やアーカイブ作業が発生します。

Retain (リテイン)

既存のシステムやアプリケーションを、オンプレミス環境にそのまま残し、クラウド移行の対象外とする手法です。

メリット:

  • 移行コスト・リスクの回避: 移行に伴うコストやリスクを完全に回避できます。
  • 法規制・コンプライアンス: 特定の法規制やセキュリティ要件、社内ポリシーにより、クラウドへの移行が難しいシステムに適しています。
  • 既存投資の維持: 既存のハードウェアやソフトウェアへの投資を無駄にすることなく活用できます。

デメリット:

  • クラウドの恩恵が受けられない: 当該システムはクラウドのスケーラビリティ、可用性、コスト効率などのメリットを享受できません。
  • ハイブリッド環境の複雑さ: オンプレミスとクラウドが混在するハイブリッド環境となり、全体の運用管理が複雑になる可能性があります。
  • 将来的な課題: ハードウェアの老朽化やソフトウェアのサポート終了など、将来的な課題が先送りされるだけになる可能性があります。

Relocate(リロケート)

既存の仮想化環境(例:VMware vSphere)を、クラウド上に構築された互換性のある仮想化環境(例:VMware Cloud on AWS)へ移行する手法です。アプリケーションやOSは変更せずに、仮想マシン単位で移動させます。

メリット:

  • 移行の容易さ: 既存の仮想化環境の知識や運用プロセスをそのまま活用できるため、比較的スムーズな移行が可能です。
  • 既存投資の活用: 既存の仮想化ソフトウェアへの投資を無駄にせず、クラウド環境でも継続して利用できます。
  • クラウドの恩恵: データセンターの物理的な制約から解放され、クラウドの柔軟性やスケーラビリティを享受できます。

デメリット:

  • 完全なクラウドネイティブではない: 仮想マシンベースであるため、Refactorほどのクラウド最適化は実現できません。
  • コスト: 通常のIaaS(EC2など)と比較して、サービス利用料が高くなる傾向があります。
  • ベンダー依存: 特定の仮想化プラットフォームに依存することになります。

この記事では、クラウド移行の手順、クラウド移行の手法、その際に留意すべき重要なポイントについて詳細に解説しました。クラウド移行はビジネスの成長とイノベーションを促進する重要なステップですが、企業の現状、移行期間、そして特有の要求に応じて、最適な移行方法は大きく異なります。

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本記事を参考にして、オンプレミスからクラウドへの移行を検討や実施をするにあたり参考になれば幸いです。