昨今、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとした大きな社会変化に伴い、消費者ニーズや市場トレンドは日々変化しています。そのため、企業は自社が保有する膨大なデータを分析し、有効なアクションを検討・実行する必要性に迫られています。
ただし、一口に「データ分析」とは言っても、扱うデータの種類や目的に応じて、その手法は多岐にわたります。本記事では、データ分析の重要性や代表的な分析手法、成功させるためのポイントなどを一挙にご紹介します。
データ分析の重要性
まずは、データ分析の基礎知識についてご説明します。
データ分析とは、自社が保有する様々なデータを多角的に分析し、有益なインサイト(洞察)を抽出することで、課題発見や運用改善などに繋げるための取り組みです。
一般的なデータは数字や文字の羅列であり、その情報だけでは意味を為しません。そのため、データ分析を行う上では、分析結果を分かりやすい形で見える化し、その情報をもとに具体的なアクションへ落とし込むことが重要なポイントになります。
昨今、デジタル技術の急速な発展に伴い、企業が保有するデータ量は爆発的に増加しました。これに伴い、自社のビジネスを成長させるためには、膨大なデータを分析し、その結果を今後の経営判断や意思決定に反映することが強く求められています。
そして、データ分析を行うことで、
- 自社の現状把握
- 有益なインサイトの抽出
- データドリブンな意思決定の実現
など、様々なメリットを享受できます。
変化の激しい現代において、企業が自社のビジネスを成長させるためには、データ分析が必要不可欠であると言っても過言ではないでしょう。
一般的なデータの種類
日常的に意識することは少ないと思いますが、一般的に「データ」と呼ばれている情報は、いくつかの種類に分けることができます。本章では、データ分析を行う際の前提知識として、一般的なデータの種類について解説します。
1st パーティーデータ
1st パーティーデータ(読み方:ファーストパーティーデータ)とは、自社が独自に集めた情報(データ)を意味する言葉であり、自社サイトへのアクセス情報や自社が実施したアンケートの回答結果などが該当します。
1st パーティーデータは外部から調達するわけではなく、自社が直接集めている情報であるため、信憑性が高いことが特徴として挙げられます。そのため、具体的なアクションを検討する上では、 1st パーティーデータが有益な参考情報になると言えるでしょう。
2nd パーティーデータ
2nd パーティーデータ(読み方:セカンドパーティーデータ)とは、他社が集めた情報(データ)を意味する言葉であり、他社アプリケーションの利用ログや他社が実施したアンケートの回答結果などが該当します。
2nd パーティーデータは他社が集めた情報であるため、自社が直接収集することはできず、外部から情報共有を受ける必要があります。また、情報のソース(出所)が他社に依存しているため、 1st パーティーデータと比較すれば、信憑性はやや低いと言えるでしょう。
3rd パーティーデータ
3rd パーティーデータ(読み方:サードパーティーデータ)とは、第三者が一般的に公開しているデータを意味する言葉であり、大学の研究結果やリサーチ会社の調査結果などが該当します。
3rd パーティーデータは大きな視点で情報を整理していることが多く、市場全体のトレンドを把握したい場合などに有効活用できます。しかし、インターネット上には数え切れないほどの 3rd パーティーデータが存在するため、提供元の信憑性に応じて情報を取捨選択し、すべてを鵜呑みにしないように注意することが大切です。
代表的なデータ分析手法 10 選!
ここまで、データ分析の重要性や一般的なデータの種類について解説してきました。本章では、代表的なデータ分析の手法を 10 つに厳選してご紹介します。
4P 分析
4P 分析とは、
- Product(商品)
- Price(価格)
- Place(販売場所・提供方法)
- Promotion(販促活動)
の 4 つの要素を基にして、膨大なデータを分析する手法です。
例えば、新しいサービスを販売するシーンについて考えてみます。
まずは「 Product (商品)」の観点でサービスの利点・強みを分析し、次に「 Price(価格)」の観点から市場の情報をもとに適正なサービス料金を分析します。そして、「 Place(販売場所・提供方法)」の観点では「どこで」「どのように」販売すれば良いのかを検討し、最後に「 Promotion(販促活動)」で必要な販促活動を検討・実行すれば、 4P 分析のプロセスは完了です。
このように、 4P 分析を活用することで、商品を販売するための一連のプロセスをデータに基づいて分析し、効率的な打ち手を検討できるようになります。
RFM 分析
RFM 分析とは、
- Recency(最終購入日)
- Frequency(購入頻度)
- Monetary(累積購入金額)
の 3 つの要素を基にして、膨大なデータを分析する手法であり、主に顧客をグループ分けする際に用いられることが多くなっています。
例えば、最終購入の履歴が直近で残っており、購入頻度や累積購入金額も高い場合、その顧客は優先度の高いグループに追加する必要があります。一方、最後に商品を購入したのが数年前以上前であり、かつ当時の購入金額が少額の場合は、優先度が低い顧客として位置付けられます。
このように、顧客をいくつかのグループに分類することで、各グループの属性に合わせた最適な打ち手の検討に繋がり、アクションの効果を最大化することが可能になります。
ABC 分析
ABC 分析とは、自社の商品やサービスを 3 つのランク( A ・ B ・ C )に分類して、データ分析を進める手法です。
具体的な活用例としては、
- A :利益率 50%以上
- B :利益率 30%以上
- C :利益率 30%未満
のように、利益率ごとにランク分けを行い、商品を分類するような使い方が考えられます。これにより、各商品が自社の利益にどれくらい貢献しているのかを可視化でき、注力すべき商品へリソースを集中させることが可能になります。
STP 分析
STP 分析とは、
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
の 3 つの要素を基にして、膨大なデータを分析する手法であり、主にビジネス市場における自社の立ち位置を把握する目的で用いられます。
まずは、顧客の属性・ニーズを基にして市場をセグメント分けし、その中から自社がターゲットとして選ぶ市場を決定します。その後、市場における競合情報などを考慮して自社の立ち位置を明確化することで、有効なアクション検討に役立てることができます。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、膨大なデータの中から、頻繁に発生するイベントの関連性を見える化するための手法です。特定のイベントが他のイベントとともに発生するパターンなどを発見し、それらの関連性を可視化することで具体的なアクション検討に繋げます。例えば、顧客が EC サイト上で「お気に入り」に登録している商品の組み合わせや、 EC サイトにおける顧客の行動パターンなどを分析し、セット販売などの新たな戦略を検討することが可能になります。
セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、市場・顧客を複数のグループに分類し、それぞれの特徴を把握するためのデータ分析の手法です。様々な切り口で市場や顧客をセグメント分けすることで、各セグメントの特性に合わせた有効なアクションを検討できるようになります。
クロス集計分析
クロス集計分析とは、異なる変数(またはカテゴリ)同士の組み合わせを分析し、データの分布を見える化することで、それぞれの関連性やパターンなどを把握する手法です。一般的には「クロス集計表」と呼ばれる表を作成し、各組み合わせにおけるデータの登場頻度や割合などを可視化します。
例えば、年齢と購買行動の相関性を見たい場合には、
- 行:年齢
- 列:購買行動(購入したか否か)
というクロス集計表を作成します。これにより、年齢と購買行動がどのように関係しているのかを把握でき、具体的なアクション検討に役立てることができます。
クラスター分析
クラスター分析とは、膨大なデータから共通の特徴を持つものをクラスター(集団)としてグループ分けする手法です。例えば、顧客やサービス、アンケート回答など、クラスター分析の対象となるものは多岐にわたります。クラスター分析を行うことで、各クラスターがどのような特性・傾向を持っているのかを把握でき、その情報をもとにアクションを検討することで、顧客目線に立った適切な施策を実行することが可能になります。
アトリビューション分析
アトリビューション分析とは、成果に至るまでの過程を分析し、各イベントが成果に対してどれくらい貢献したのかを把握する手法です。アトリビューション分析の代表的な活用シーンとしては、 Web 広告の効果測定が挙げられます。
Web 広告を通じて商品が購入された場合、当然ながら Web 広告が商品購入に貢献していることは確実ですが、広告以外にもセミナー参加や資料請求など、様々なプロセスを経て購入を決めた可能性があります。
アトリビューション分析を行うことで、各プロセスの商品購入に対する貢献度を見える化できるため、顧客が購買に至るまでのすべての過程を踏まえながら、最適な Web 広告の運用を実現することが可能になります。
ロジスティック回帰分析
ロジスティック回帰分析とは、複数の要因(説明変数)から 2 値の結果(目的変数)が発生する確率を予測するための手法です。なお、「 2 値の結果」という言葉は聞き慣れないと思いますが、「クリックする」と「クリックしない」のように、その答えが 2 通りしかない値のことを意味しています。
ロジスティック回帰分析を活用することで、顧客属性(年齢・性別・居住地域・過去の購買情報)などの客観的なデータを基にして、自社の製品が購入される確率を算出できます。これにより、中長期的な経営戦略を打ち出すことが可能になるため、ロジスティック回帰分析はビジネスを成長させるための心強い武器になると言えるでしょう。
データ分析を成功させるためのポイント
データ分析を行う際には、いくつか注意すべき点が存在します。本章では、データ分析を成功させるためのポイントについて解説します。
目的を明確化する
データ分析はそれ自体が目的ではなく、何かを達成するための手段に過ぎません。そのため、まずは自社の目的やゴールを決めて、何のためにデータ分析を行うのかを明確化してください。目的が不明瞭な状態では、データ分析の効果は薄れてしまうため、時間をかけて慎重に検討することが大切です。
最適な分析手法を選ぶ
前述した通り、データ分析には様々な手法が存在します。そのため、自社の目的や取り扱うデータの種類に応じて、どの分析手法を使うのかを慎重に検討してください。
例えば、自社サービスについて分析したい場合は ABC 分析が有効ですし、将来予測を行いたい場合はロジスティック回帰分析が効果的です。このように、自社がデータ分析で実現したいゴールから逆算し、最適な分析手法を選択することが大切です。
IT ツールを活用する
膨大なデータを手動で分析するのは困難であるため、 IT ツールを導入して作業を効率化することが一般的です。 IT ツールの導入にはコストを伴いますが、得られる恩恵は非常に大きいため、必要投資だと捉えて、前向きにツールの導入を検討することが重要なポイントになります。
なお、次章でデータ分析を効率化するための IT ツールをご紹介していますので、関心のある方はぜひご覧ください。
データ分析を効率化するための IT ツール
前述した通り、データ分析を成功させるためには、 IT ツールの活用が有効な選択肢になります。最後に、データ分析を効率化するための IT ツールを 4 つに厳選してご紹介します。
Tableau
※出典:Tableau 公式ページ
Tableau (読み方:タブロー)は代表的な BI ツールの一種であり、膨大なデータを分かりやすく可視化できます。簡単に使えるユーザーインターフェースが Tableau の大きな特徴となっており、直感的な操作で見やすいダッシュボードを容易に作成できます。データ分析を行う上では、 Tableau が有効な武器の一つになると言えるでしょう。
Domo
※出典:Domo 公式ページ
Domo (読み方:ドーモ)はデータ分析に有効活用できる様々な機能が備わったクラウド型のプラットフォームです。膨大なデータを即座に統合・活用できるだけではなく、取り込んだデータを組み合わせて、ダッシュボードで分かりやすく表現できます。さらに、社外に対して分析結果を共有できるなど、データ活用に求められる全てのプロセスを Domo の中だけで完結させることが可能です。
Microsoft Power BI
Microsoft Power BI (読み方:マイクロソフトパワービーアイ)は Microsoft 社が提供するデータ分析ツールです。膨大なデータをもとに手間なくレポート作成できることはもちろん、 Microsoft 製品を中心としたあらゆるデータと連携可能な点が大きな特徴です。また、 Microsoft Power BI はデータの二重暗号化によって安全性を高めているため、ビジネスシーンでも安心して利用することができます。
BigQuery
※出典:BigQuery 公式ページ
BigQuery (読み方:ビッグクエリー)は Google 社が提供するビッグデータ解析サービスです。超高速なデータ処理が BigQuery の大きな特徴であり、ペタバイト級の大容量データを数秒から数十秒程度の短い時間で処理できます。昨今、企業が保有するデータ量は年々増加しているため、ビッグデータの分析に取り組む場合には、 BigQuery が有効なツールになると言えるでしょう。
まとめ
本記事では、データ分析の重要性や代表的な分析手法、成功させるためのポイントなどを一挙にご紹介しました。
企業がデータ分析を行うことで、自社の現状把握やデータドリブンな意思決定の実現など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、具体的な分析手法や成功させるためのポイントを理解しておきましょう。
また、データ分析は闇雲に実行しても思うような効果を得ることはできず、
- どのようなインサイトを得たいのか?の検討
- そのためにはどのようなデータが必要なのか?の検討
- データの収集
- データの加工
- データの分析
- データの可視化
など、複数のステップを適切な順番で進めていく必要があります。
このように、データ分析を行う際には、分析作業に着手する前に実施すべき事項が多く存在するため、全体戦略を慎重に検討し、計画的に作業を進めることが大切です。
もし、自社だけでデータ分析を進めるのが不安な場合は、第三者へ依頼することも有効な選択肢になります。専門家へ依頼することで、データ分析を円滑に進められることはもちろん、分析結果の精度を向上させることが可能になります。
当社センティリオンシステム 大阪事業所はこれまでの多くのクラウド開発を支援してきた知見を活かし、クラウドを活用した内製化に取り組まれるお客様を全力でサポートします。データ分析に関するサポートを行うことも可能なため、以下のような課題をお持ちの方はぜひお気軽にご相談ください。
- クラウド活用を推進するための開発体制作りが進まない
- 既存資産をどのようにクラウド移行するか検討する知見が不足している
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本記事を参考にして、データ分析への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?