Google Cloud における生成 AI の活用事例 5 選

Google Cloud における生成 AI の活用事例 5 選

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Google Cloud における生成 AI の活用事例 5 選

昨今、 ChatGPT をはじめとした生成 AI が大きな注目を集めています。 Google が提供するパブリッククラウド「 Google Cloud 」にも生成 AI 関連のサービスが多数搭載されており、様々なビジネスシーンで活用されています。

本記事では、 Google Cloud における生成 AI の活用事例を一挙に 5 つご紹介するとともに、生成 AI 活用を成功させるポイントについても解説します。生成 AI に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、生成 AI について理解を深めたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。生成 AI の概要やメリット、具体的な活用事例などを解説していますので、あわせてご覧いただければと思います。

※引用:センティリオンシステム公式ページ「 Google パートナー事業

Google Cloud は Google 社が提供するパブリッククラウドであり、以前は Google Cloud Platform ( GCP )という名称で親しまれていました。全世界で圧倒的なユーザー数を誇り、様々な企業が Google Cloud を活用して自社の生産性向上を実現しています。

Google Cloud と同じ種別のサービスとしては、 Microsoft 社の Microsoft Azure や Amazon 社の AWS などが挙げられます。これらは「 3 大クラウドサービス」と呼ばれており、数あるクラウドサービスの中でも、特に有名なものとして広く認知されています。

また、 Google Cloud では、 Gmail や YouTube など、 Google の代表的なサービスと同じインフラを採用しています。そのため、盤石なシステム基盤の上に構築されており、ビジネスシーンでも安心して利用できる点が、 Google Cloud の大きな魅力となっています。

さらに、 Google Cloud はデータベースやストレージなどの各種機能に加えて、 AI や機械学習のサービスも数多く展開しています。昨今、 ChatGPT をはじめとした「生成 AI 」が大きな注目を集めていますが、 Google Cloud には生成 AI に関連するサービスも多数搭載されています。

このように、 Google Cloud には様々な機能・サービスが備わっており、これらを活用することで、自社のビジネスを大きく成長させることができます。 Google の最先端のテクノロジーをフル活用したい方は、 Google Cloud が有効な選択肢の一つになると言えるでしょう。

Google Cloud には、生成 AI 関連の機能・サービスが数多く搭載されています。本章では、 Google Cloud の生成 AI の特徴について解説します。

Google の高機能な AI を活用できる

Google と言えば、「 Google 検索エンジン」が有名ですが、  Google は自社の検索エンジンによって膨大なデータセットを保有しており、これらを機械学習モデルのトレーニングに活用することで、高精度な予測・解析を実現しています。

例えば、 2023 年 12 月には、 Google の新しい生成 AI モデルとして「 Gemini 」がリリースされました。 Gemini はマルチモーダル(テキストや画像、動画、音声など、様々なデータを入出力できる)特性を備えた最新の生成 AI モデルであり、複数のデータ形式を扱えるように開発されています。

このように、 Google は AI ・機械学習の領域において、常に市場の最先端を進んでいます。 Google の高機能な AI を活用できる点は、 Google Cloud で生成 AI を開発する大きなメリットになると言えるでしょう。


向上を実現するためには、 Gemini が心強い武器の一つになると言えるでしょう。

自然言語処理・画像認識に注力している

Amazon 社の「 Amazon Web Services ( AWS )」や Microsoft 社の「 Microsoft Azure 」など、生成 AI を開発できるクラウドサービスは複数存在しますが、 Google Cloud は自然言語処理や画像認識に注力している点が大きな特徴となっています。

例えば、自然言語処理は「 Conversation AI 」、画像認識は「 Imagen 」など、高機能な生成 AI サービスが用意されています。そのため、自然言語処理や画像認識の領域で生成 AI を活用したい場合は、 Google Cloud がおすすめの選択肢になります。

一方、 AWS は包括的な AI サービスのエコシステムであり、 Microsoft Azure はノーコード開発やビジネスアプリとの連携に強みを持っています。このように、一口に「生成 AI 」と言っても、その特徴はサービスごとに異なるため、自社の目的に合わせて最適なものを選択することが大切です。

AI モデルを自由にカスタマイズできる

Google Cloud に搭載されている「 Vertex AI 」を活用することで、自社の状況に合わせて AI モデルを自由にカスタマイズできます。また、「 Generative AI Studio 」を使えば、プログラミングの知識がなくてもモデルをチューニングすることが可能になります。

このように、柔軟かつ簡単に AI モデルをカスタマイズできる点は、 Google Cloud の大きな魅力の一つだと言えます。 AI モデルを自由自在にカスタマイズ・チューニングすることで、様々なビジネスシーンにおいて AI の新たな可能性を発見できることでしょう。

新サービスが次々に追加されている

Google Cloud では、新しいサービスが次々に追加されています。例えば、 2023 年 5 月に開催された「 Google I/O 2023 」では、 AI 関連の様々な新規プロダクトが発表されました。

加えて、 2023 年 8 月 の「 Generative AI Summit 」では、 PaLM 2 や Codey の日本語対応が発表され、サービスの利便性がさらに向上しました。このように、 Google Cloud は新規プロダクトの追加や機能アップデートが頻繁に行われるため、常に最先端の AI テクノロジーを自社で活用できます。

ここまで、 Google Cloud の生成 AI について解説してきましたが、実際に多くの企業が Google Cloud を活用し、生成 AI を自社のビジネスに役立てています。本章では、 Google Cloud の生成 AI の活用事例を 5 つに厳選してご紹介します。

新薬開発:中外製薬

新薬開発に取り組む中外製薬では、「 CHUGAI DIGITAL VISION 2030 」というビジョンのもと、 2019 年から DX に取り組んでいます。その中で、 Google Cloud の生成 AI を活用した、創薬プロセスの変革を検討しています。

通常、一つの新薬を開発するためには、

  • 創薬研究
  • 開発研究
  • 臨床試験

といったプロセスを経る必要があり、消費者の手に届くまでには 10 年以上の期間、コストとしては 3,000 億円以上の費用が発生します。そして、この長い開発期間が、新薬開発における大きな課題の一つとなっていました。

そこで同社は、この課題を解決するために Google Cloud の Med-PaLM 2 を採用しました。 Med-PaLM 2 は医療分野における専門用語の学習に加えて、画像説明や物体検出、シーン分類などのタスクを実行できる LLM ( Large language Models :大規模言語モデル)であり、 X 写真やマンモグラフィなどの放射線医学に関する画像のほか、健康記録や皮膚学など、あらゆる医学療育の画像を学習することで、医学的な質問に対して精度の高い回答を返すことができます。

そして、この Med-PaLM 2 を臨床試験計画の作成に活用することで、膨大な医療情報から必要なものだけを瞬時に抽出可能になります。チャットボット形式で簡単に情報を検索できることに加えて、文書のドラフト作成も可能なため、臨床試験計画の作成期間を大幅に削減できると期待を寄せています。

ファッションアプリ: ZOZO

ファッション関連の EC サイト「 ZOZOTOWN 」を運営する ZOZO では、「 WEAR 」というファッションコーディネートアプリを展開しています。従来、 WEAR におけるコーディネートの説明文は社員が作成していましたが、膨大なコンテンツの説明文を考えるのは大きな労力が必要であり、社員への業務負荷が課題となっていました。

そこで、同社は Google Cloud の PaLM 2 を導入し、説明文の作成を AI に代行させるべく、社内における AI 活用を大々的に推進したのです。これにより、社員の業務負荷は大幅に低減され、これまで課題となっていた説明文の作成時間を従来の 3 分の 1 にまで短縮することに成功しました。

飲食ドライブスルー:ウェンディーズ

ファストフード店「  Wendy's 」を展開するウェンディーズでは、ドライブスルー注文時の業務プロセスが大きな課題となっていました。ウェンディーズの注文はメニューオプションや特別なリクエストなどによって無数のパターンが存在しますが、注文と同時に調理が開始されるため、万が一、注文を間違えた場合に大きなリスクを伴うことになります。

そこで同社は、 Google Cloud の Vertex AI を導入し、この課題を解決しました。具体的には、 AI にメニュー情報や会話ロジックなどの情報をインプットし、その上で POS システムなどのハードウェアと連携させることで、注文プロセスにおける複雑さを解消したのです。これにより、誤注文による顧客エクスペリエンスの低下を回避するとともに、社員は高品質な食品を迅速に提供することに集中できるようになりました。

サイト内検索:アイレット

クラウド事業を展開するアイレットでは、自社サイトの事例紹介ページにフリーワード検索の機能が搭載されておらず、閲覧者が欲しい情報に辿り着くまでに時間がかかることが課題の一つとなっていました。

そこで同社は、 Google Cloud の Vertex AI Search and Conversation を導入し、プロジェクト開始からわずか 3 日で検索ウィジェットをサイト内に実装したのです。これにより、サイトの閲覧者は高精度なフリーワード検索が可能になり、自身が求めている情報に短時間でアクセスできるようになりました。

加えて、現在は事例紹介ページだけではなく、サイト全体へ検索ウィジェットを実装するための準備も進めています。これが実現すれば、アイレットのサイト全体の利便性が大きく向上するため、様々なシーンでさらなるビジネス成長に繋がるでしょう。

コンタクトセンター:伊藤忠テクノソリューションズ

コンサルティングやシステム開発などを提供する伊藤忠テクノソリューションズでは、顧客向けのコンタクトセンターにおけるオペレーターの対応品質維持や、応答効率化が大きな課題となっていました。

そこで同社は、 Google Cloud の Contact Center AI をはじめとした AI サービスを組み合わせて、コンタクトセンター業務の効率化に着手したのです。具体的な運用としては、入電時の電話番号や契約番号をもとに顧客を特定し、過去の購買データやサイトの行動履歴などを参照して AI が用件を予測し、顧客の目的に合わせた音声ガイダンスを案内します。

また、顧客の発言内容に合わせてボイスボットが適切な答えを返すための仕組みも整備しており、コールセンターの無人化・省人化を実現しています。さらに、通話が終わった後は AI が会話内容を自動的にまとめて、要約したものをシステムへ自動保存してくれます。

このように、 Google Cloud の生成 AI を活用し、業務効率化や生産性向上を実現した好事例と言えるでしょう。

なお、 Google Cloud に搭載されている生成 AI サービスについては、以下の記事で詳しく解説しています。事例の中に出てきたソリューションも紹介していますので、関心のある方はぜひご覧ください。

最後に、 Google Cloud の生成 AI 活用を成功させるためのポイントを 3 つご紹介します。前述した活用事例の内容も踏まえながら、どのような点を意識すべきなのかを見ていきましょう。

生成 AI の活用領域を明確化する

前述した多くの事例に共通していることとして、生成 AI の活用領域を明確化している点が挙げられます。例えば、中外製薬における臨床試験計画の作成や、伊藤忠テクノソリューションズにおけるコンタクトセンターの顧客対応など、生成 AI を利用する具体的な業務を決めています。

Google Cloud には、様々な生成 AI サービスが搭載されているが故に、実現できることの幅が広く、目的を定めずに使用した場合、思うような効果を得られない可能性があります。そのため、まずは自社が改善したい課題を洗い出し、生成 AI によって効率化・自動化したい領域を慎重に検討してください。

最新の生成 AI サービスをキャッチアップする

前述した通り、 Google Cloud には新しい生成 AI サービス・機能が続々と追加されています。

中外製薬・ ZOZO の事例に登場した PaLM 2 に関しても、これらが生成 AI に対応することが発表されたのは 2023 年 3 月のことであり、比較的最近の出来事だと言えるでしょう。そのため、自社にとって最適なサービスを選択するためには、生成 AI サービスに関する知識・情報を常に最新の状態にアップデートする必要があります。

Google の場合、 Google Cloud Next や Google I/O 、 Generative AI Summit など、大規模なイベントが定期的に開催されています。最近では、ビデオ会議によるオンライン開催のイベントが増えており、自宅からでも気軽に参加できるため、可能な限りこれらのイベントに顔を出し、最新情報をキャッチアップしておくと良いでしょう。

生成 AI の活用を促進するための企業文化を醸成する

Google Cloud に限った話ではありませんが、生成 AI の活用を成功させるためには、 AI 活用を促進するための企業文化の醸成が必要不可欠です。アイレットが導入からわずか 3 日で検索ウィジェットを実装した事例のように、組織全体で生成 AI の活用を推進することで、 AI の導入効果の最大化や自社のビジネス成長に繋がります。

そのためには、経営層が生成 AI に対する理解を深めて、積極的に組織全体の AI 活用をリードしていくことが求められます。加えて、生成 AI の活用に関するプロジェクトチームを発足し、全社員に AI 活用の必要性やメリットを伝えることで、自社の AI 活用をスムーズに進められるようになり、会社全体に浸透させることが可能になります。

生成 AI を活用する際には、情報漏洩リスクを十分に考慮することが大切です。自社の機密情報を AI に読み込ませ、万が一、その情報が漏洩した場合、取り返しのつかない事態に陥るリスクがあります。

また、生成 AI はとても便利である一方で、 AI の精度が低い場合はかえって自社の生産性が低下する可能性もあります。そのため、生成 AI をビジネスで活用する際には、高精度な AI を選ぶように意識してください。

加えて、生成 AI でクリエイティブコンテンツを作成する場合、著作権や商標権、意匠権、肖像権、パブリシティ権、プライバシーなどの法的権利の侵害にも気を配る必要があります。最悪のケースでは、権利侵害で訴訟に発展するリスクもあるため、生成 AI を活用する際には、細心の注意を払っておきましょう。

これらの注意点に関しては、以下の記事で詳しく解説しています。関心のある方は、ぜひあわせてご覧ください。

本記事では、 Google Cloud における生成 AI の活用事例を一挙に 5 つご紹介するとともに、生成 AI 活用を成功させるポイントについても解説しました。

企業が Google Cloud の生成 AI サービスを活用することで、高精度な自然言語処理・画像認識や AI モデルのカスタマイズなど、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、具体的な活用事例や成功させるためのポイントなどを理解しておきましょう。

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