GKEとCloud Runの決定的な違い3選:機能・管理レベル・コスト比較表

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GKEとCloud Runの決定的な違い3選:機能・管理レベル・コスト比較表

GKE(Google Kubernetes Engine)とCloud Runは、Google Cloud上でコンテナ運用を効率化する強力なソリューションです。しかし、「コンテナを扱う」という共通点がありながら、開発速度、運用負荷、カスタマイズ性で決定的に異なります。本記事では、最適なサービスを選定するための最重要ポイントを先に解説します。

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GKEは、コンテナの運用管理や自動化を行うためのオープンソースソフトウェア(OSS)であるKubernetes(コンテナオーケストレーションツール)の運用を効率化できるサービスです。

GKEはマネージドサービスとして提供されており、インフラ部分の保守・運用はGoogleが担当するため、自社の負荷軽減に繋がります。

主な特徴は以下の通りです:

  • 高い柔軟性と豊富な機能:
    • 負荷に応じてノードを自動的にスケーリングできます。
    • Google Cloudのアカウントと連携した権限制御が可能です。
    • トラフィックの負荷分散やロギング・モニタリング機能などが搭載されています。
  • 大規模なコンテナオーケストレーションへの適性:
    • Cloud Buildや他のCI/CDツールとの統合が可能で、自動化されたビルドやデプロイプロセスをサポートします。
    • Kubernetesの機能を最大限に活用したい場合に有効です。

GKEは高性能なコンテナプラットフォームであり、Kubernetesの運用を効率化し、自社の負荷軽減や生産性向上を実現できます。

GKEのメリット・デメリット

メリットデメリット
柔軟性・制御柔軟な制御と高度なカスタマイズ性に優れる。Cloud Runと比較して運用負荷が残る部分がある(ある程度のノード管理など)
機能Kubernetesの機能をフル活用できる。ステートフルなアプリケーションもサポート対象Cloud Runのようなアクセスがない時のインスタンス「0」のスケーリングは採用していない
エコシステムKubernetesエコシステムを最大限活用できる。Cloud Buildや他のCI/CDツールとも統合可能。学習コスト:Kubernetes自体の理解が必要となる。
コスト大規模な常時稼働環境では、StandardモードでCompute Engineの料金設定に沿ってインスタンスごとに課金されるため、コスト効率が高くなる可能性がある。Standardモードの場合、自分でインフラを管理する分、運用工数が発生する。

Cloud Runの概要と特徴

Cloud Runは、GKEと同様にコンテナ運用を効率化できるツールであり、フルマネージドサービスとして提供されているコンテナの実行環境です。構築したコンテナイメージをCloud Runに乗せることで、Kubernetesによって処理できる様々な機能を手間なく実現できます。

主な特徴は以下の通りです:

  • サーバレスコンテナプラットフォーム:
    • アプリケーション本体や設定ファイル、ライブラリなどをコンテナ上に集約し、コンテナベースでアプリケーションを動かせるため、実行にかかる作業負荷を大幅に低減できます。
  • 自動スケーリングとコスト効率:
    • 外部からのアクセスがない状態ではコンテナのインスタンスが0になり、アクセスに伴って必要量までスケールする仕組みです。手動でリソースを調整する必要がなく、高速なスケーリングを実現できます。
  • 高速デプロイと手軽さ:
    • デプロイは「gcloud run deploy」などの単一コマンドを実行するだけで簡単にできます。
    • デプロイ後には固有のURLが自動発行され、外部へのアプリケーション公開が容易です。

Cloud Runのメリット・デメリット

メリットデメリット
運用・管理運用負荷ほぼゼロのフルマネージドサービス。開発に集中できる。
柔軟性の制限:GKEと比較してカスタマイズ性に劣る。
スケーリングトラフィック予測が難しいシーンでも、アクセスに応じてインスタンスが0から必要量まで自動スケールするため安心。
ステートレスなアプリケーションのみをサポートしており、セッション情報などを保持するステートフルなワークロードには不向き。
コスト効率利用した分だけ課金される従量課金制 。外部からのアクセスがない時はインスタンスが0になるため、コスト効率が良い。常時稼働し続ける大規模な環境では、GKEの方が単価が下がる可能性がある。
デプロイ単一コマンドで高速デプロイが可能。
比較項目Google Kubernetes Engine (GKE)Cloud Run
管理レベルマネージドサービスフルマネージドサービス
運用モデルコンテナオーケストレーションサーバレスコンテナ
スケーリング水平 Pod 自動スケーリング(CPU使用率などに応じて) アクセスがない時はインスタンス0から必要量まで自動スケール
柔軟性/カスタマイズ性高い。Kubernetesの機能をフル活用でき、細かいカスタマイズが可能。制限的。シンプルなデプロイに特化しており、カスタマイズ性に劣る。
サポートするアプリステートフルなアプリケーションもサポートステートレスなアプリケーションのみをサポート
デプロイの容易さKubernetesの知識が必要だが、効率化されたコンソールがある。容易。単一コマンドで高速デプロイ可能。
ユースケースKubernetesのフル活用、ステートフルアプリ、細かいカスタマイズ開発集中、ステートレスアプリの高速デプロイ、トラフィック予測が難しいケース 

選定ポイント1:運用・管理の容易さ

フルマネージドを重視し、運用工数を最小限に抑えたいなら、サーバー管理の大部分をGoogleに任せられるCloud Runがおすすめです。Kubernetesの機能をフル活用したい、細かな制御を自分で行いたいなら、GKEが適しています。GKEもマネージドサービスですが、ノードのアーキテクチャや設定など、ある程度の制御が可能です。

選定ポイント2:コスト効率

GKEとCloud Runはどちらも従量課金制を採用しています。

  • 利用頻度が低い、急激なトラフィック変動がある場合:アクセスがない時にインスタンスが0になるCloud Runは、コスト効率が非常に高いです。
  • 常時稼働、大規模な場合:GKEのStandardモードなど、大規模な環境ではCompute Engineの料金設定に沿った課金となり、単価が下がる可能性があります。

選定ポイント3:柔軟性とカスタマイズ性

Kubernetesエコシステムを活用したい、複雑なデプロイ要件がある場合は、カスタマイズ性に優れるGKEを選択する必要があります。シンプルなWebサービスやAPIであれば、デプロイが簡単なCloud Runが開発効率の面で優位です。

選定ポイント4:ワークロードの種類

  • ステートフルなワークロード:以前の状態を保持するECサイトのカート情報などのアプリケーションをデプロイしたい場合は、GKEを選択する必要があります。

ステートレスなワークロード:以前の状態を保持せず、都度処理を要求するWebサイトなどを迅速にデプロイしたい場合は、Cloud Runが有効なサービスです。

使い分けのパターン

サービス向いているケース
Cloud Runイベント駆動型サービスやWeb API
シンプルなWebサイトやバッチ処理
トラフィック予測が難しい、突発的なアクセス増加が予想されるサービス
GKE大規模なマイクロサービスや複雑なデプロイ要件
ステートフルなアプリケーションのデプロイ
既存Kubernetes資産の移行

両者を組み合わせるハイブリッドな活用例

GKEとCloud Runは、それぞれの強みを活かして組み合わせて利用することも可能です。

  • GKEで主要なマイクロサービスを運用し、Cloud Runで補助的なサービスを稼働させるというハイブリッドな活用が考えられます。例えば、GKEで処理負荷の高い基幹システムを運用しつつ、Cloud Runのスケールtoゼロの特性を活かして、バッチ処理や非同期処理、あるいはイベント駆動型の補助的なAPIを稼働させることができます。
  • Cloud Runには「Cloud Run for Anthos」というサービスが用意されており、これを活用することで、コンテナの環境をサーバーレス環境として使え、既存のKubernetesクラスタでのCloud Runの利用、マルチクラウドやオンプレミス環境での利用が可能となります。

Google Kubernetes Engine (GKE) と Cloud Run はどちらもコンテナ運用を効率化するための強力なソリューションですが、特徴やメリットはそれぞれ異なります。

弊社センティリオンシステムは、Google Cloudのコンテナ運用における豊富な知見と高い技術力を有するクラウドインテグレーターとして、お客様の状況に応じた最適なサービス選定と導入・運用を支援しています。GKEとCloud Runのどちらを選ぶべきか迷っている方、Kubernetes環境の構築やサーバーレス化に疑問・不安をお持ちの方は、お客様が実現したい要件やアプリケーションの種類に応じた最適なアドバイスやコンサルティングが可能です。

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