テラフォーム( Terraform )というサービスをご存知でしょうか?米国の HashiCorp 社が提供する IT ツールであり、コードによるインフラ管理を実現できるソリューションです。
本記事では、テラフォームとは何かという基礎知識やテラフォームのメリット・デメリット、活用時のポイントなど、あらゆる観点から一挙にご紹介します。テラフォームについて関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
IaC( Infrastructure as Code )とは?
テラフォームの説明に入る前に、まずは「 IaC 」という言葉の意味を理解しておきましょう。
IaC とは「 Infrastructure as Code 」の略であり、コードを用いてシステムインフラ(サーバーなど)を構築するための仕組みのことです。なお、今回ご紹介するテラフォームも IaC に分類されるツールの一つとなっています。
本来、サーバー上でデータ管理などの各種機能を提供するためには、ソフトウェアインストールや設定作業を伴うことが一般的です。そして、これらを手動で行う場合、膨大な時間を要したり、ヒューマンエラーによって不具合が発生したりするケースも珍しくありません。
その点、 IaC を活用すれば、あらかじめコードを記述しておくことで、インストールや設定作業を自動化できます。これにより、工数削減やヒューマンエラーの防止などに繋がり、自社の生産性を大幅に向上させることが可能になります。
このように、 IaC はシステムインフラを構築する上で、とても有効な武器の一つになると言えるでしょう。
テラフォーム( Terraform )とは?
IaC について理解したところで、次はテラフォーム( Terraform )の概要をご説明します。
テラフォームは IaC ツールの一種であり、米国の HashiCorp 社によって開発・提供されているサービスです。
テラフォームを活用すれば、システムインフラをコードで管理・構築し、環境やリソースをプログラム的に定義することで、あらゆる変更作業を自動的に実行できます。これにより、自社のシステムインフラの管理・構築を効率的に行うことが可能になります。
また、テラフォームはオープンソース(ソフトウェアを構成しているプログラムコードが無料で一般公開されていること)で提供されている点が大きな特徴です。ただし、無償版では機能が制限されているため、ビジネスシーンで利用する場合には、有償プランがおすすめの選択肢になります。
テラフォームの 3 つの特徴
本章では、テラフォームの 3 つの特徴についてご説明します。どのような特徴があるのか、ぜひ内容を理解しておきましょう。
コードによるインフラ管理
従来のインフラ管理では、ソフトウェアのインストールや複雑な設定作業が求められることが一般的でした。しかし、テラフォームはシステムインフラをコードによって管理できるため、異なる担当者が作業を行う場合でも、一定の品質を担保することができます。このように、コードを用いたインフラ管理により、システムインフラの品質や環境を保持できる点は、テラフォームをはじめとした IaC の大きな特徴の一つだと言えるでしょう。
マルチクラウド展開
昨今、複数のクラウドサービスを並行利用し、マルチクラウド環境を構築している企業も珍しくありませんが、テラフォームは Google Cloud や Azure 、 AWS など、異なるクラウドサービスを統合し、効率的に運用することが可能になります。そのため、マルチクラウドを運用中または検討中の企業にとっては、非常に心強いツールであると言えます。
オープンソースでの提供
テラフォームの大きな特徴として、無償のオープンソースで提供されている「コミュニティ版」の存在が挙げられます。このコミュニティ版を活用することで、コストを掛けずに気軽にテラフォームの利用イメージを掴むことができます。
ただし、無償版では機能が制限されているため、ビジネスシーンで使う場合は有償版の利用を推奨します。なお、記事の後半で無償版と有償版の違いについて説明していますので、そちらもあわせてご確認ください。
テラフォームのメリット
ここまで、テラフォームについて詳しく解説してきましたが、企業がテラフォームを活用することで、具体的にどのようなメリットを享受できるのでしょうか?
本章では、テラフォームの代表的なメリットをご紹介します。
業務効率化に繋がる
テラフォームでは、過去に記述したコードを再利用して使い回すことができます。これにより、再度コードを書き直す必要はなく、自社の業務効率化や生産性向上に直結します。また、インストール作業や設定作業からも解放されるため、人件費の削減にも大きく寄与します。
ヒューマンエラーを回避できる
インフラの管理・構築を人間が手作業で行う場合、ヒューマンエラーが発生する可能性が高まります。その点、テラフォームは一度構築したインフラをもとに環境を構築でき、変更作業なども自動的に実行可能なため、ヒューマンエラーのリスクを最小限に抑えつつ、インフラの管理・構築を行うことができます。
マルチクラウド環境を統一できる
前述した通り、テラフォームはマルチクラウド環境の統一に役立つツールとなっています。テラフォームで構築したインフラは、共通の言語・ツールで使うことが可能なため、マルチクラウド環境を統一しながら運用することが可能になります。これにより、異なるクラウド環境を利用する大規模なプロジェクトにおいても、正確かつ一貫性のある検証などを行うことができます。
テラフォームのデメリット
テラフォームには様々なメリットがありますが、同時に注意すべきデメリットも存在します。自社で活用する際に困ることがないよう、事前にテラフォームのデメリットを理解しておきましょう。
使いこなすには一定の知識・スキルが求められる
テラフォームはコードによってインフラ環境を管理・構築するため、ツールを使いこなすには、 IaC に対する理解やプログラミングの知識など、一定のスキルが求められます。そのため、完全初心者が高いパフォーマンスを発揮することは難しく、 IT 人材の確保が必要になる点は覚えておいてください。
大幅なバージョン変更が発生する可能性がある
テラフォームは機能改良や仕様改善などが継続的に行われているツールであり、今後の展開次第では、大幅なバージョン変更が発生することも考えられます。そして、その場合は操作方法などを改めて学習する必要があるため、この点にはあらかじめ注意しておくと良いでしょう。
ただし、これはテラフォームに限った話ではなく、ソフトウェアの世界では、新機能の追加や改善のために、定期的なアップデートが行われることが一般的です。そのため、将来的なバージョン変更の可能性に関しては、テラフォーム以外のソフトウェアにも該当する事柄だとご理解ください。
テラフォームを活用する際のポイント
テラフォームを活用する際には、具体的にどのような点を意識する必要があるのでしょうか?その内容は多岐にわたりますが、今回は代表的なものをいくつかピックアップしてご紹介します。
なお、当社センティリオンシステム 大阪事業所では、記事内でご紹介している以外のポイントについても全面的にサポートすることが可能です。無料相談も受け付けていますので、関心のある方は問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
有償版を利用する
テラフォームの利用イメージを掴みたいだけならオープンソースの無償版で十分ですが、ビジネスシーンで利用する場合は有償版の契約をおすすめします。テラフォームの有償版は、「 Standard 」「 Plus 」「 Enterprise 」の 3 つのプランが存在しており、それぞれ価格や機能が異なります。
以下、テラフォームのプランごとの違いを表にまとめます。
無料版 | Standard | Plus | Enterprise | |
---|---|---|---|---|
料金※1 | 無料 | 0.00014 米ドル | 非公開 | 非公開 |
ワークスペース | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
変数 | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
プロジェクト | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
チーム管理 | × | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
コード不要のプロビジョニング | × | × | ⚪️ | ⚪️ |
組織間のレジストリ共有 | × | × | × | ⚪️ |
監査ログ | × | × | ⚪️ | ⚪️ |
ドリフト検出 | × | × | ⚪️ | ⚪️ |
自己ホスト型インストール | × | × | × | ⚪️ |
アプリケーションレベルのロギング | × | × | × | ⚪️ |
ログ転送 | × | × | × | ⚪️ |
シングル・サインオン | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
トリガー実行 | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
プレミアムサポートとサービス | × | ⚪️ | ⚪️ | ⚪️ |
同時実行性※2 | 1 | 3 | 10 | キャップなし |
※2. 同時実行容量は、割り当てられたコンピューティングリソースによって制限
このように、運用効率を高めながらテラフォームの機能をフル活用したい場合には、有償版の利用を検討すると良いでしょう。
コードをモジュール化する
テラフォームでコードをモジュール化すれば、そのコードをテンプレートとして利用可能になります。例えば、サーバーを作成するためのソースコードをモジュール化することで、 1 つのコードから複数の同一サーバーを作ることができます。このように、コードのモジュール化は様々なシーンで自社の業務効率化に寄与するため、積極的に活用してみてください。
バージョン管理を行う
テラフォームでは、インフラの状態をコードによって記述し、コード管理ツール( GitHub など)でバージョン管理を行うことができます。これにより、複数の環境を手作業で一つずつ管理する必要はなくなり、旧バージョンの再現や複製などの作業を効率的に実施することが可能になります。また、各種作業を手動から自動へ切り替えることで、人為的ミスの削減にも直結し、正確かつスピーディーな対応を実現できることでしょう。
環境ごとにコードを分離する
テラフォームを利用する際は、環境ごとにコードを分離することが大切です。これにより、異なる環境をそれぞれに適したコードで管理でき、効率的に運用することが可能になります。また、テラフォームは異なる環境においても共通の言語・ツールを使用できるため、分離したコードの管理も手間なく行うことができ、運用が煩雑化することはありません。
公式ドキュメントを活用する
テラフォームでは、ツールの設定方法などを一元的にまとめた公式ドキュメントが用意されています。そのため、体系的にテラフォームの学習を進めたい場合は、これらのドキュメントを活用することが近道になると言えるでしょう。こちらのリンクからテラフォームの公式ドキュメントに飛べますので、関心のある方は一度ご覧ください。
IT 人材を積極的に雇用・教育する
テラフォームを有効活用するためには、一定のスキル・経験が求められます。そのため、テラフォームの導入を検討する際には、社内に IT 人材を確保することが必要不可欠だと言えます。
ただし、日本は慢性的な IT 人材不足が続いており、優秀な人材を確保することは容易ではありません。そこで、中途採用を積極的に行うだけではなく、既存社員を教育して IT 人材化することも選択肢の一つに加えてください。
なお、当社では貴社の状況に合わせた体制づくり支援や開発計画支援、クラウド開発スキルアップ支援など、様々な支援メニューを提供しています。無料相談も可能なため、関心のある方は問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
まとめ
本記事では、テラフォームとは何かという基礎知識やテラフォームのメリット・デメリット、活用時のポイントなど、あらゆる観点から一挙にご紹介しました。
企業がテラフォームを活用することで、業務効率化やマルチクラウド環境の統一など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、活用時の重要なポイントを理解しておきましょう。
また、テラフォームの活用には IT 人材が必要不可欠ですが、中途採用での確保が難しい場合には、既存社員に教育を行い、 IT 人材化することも有効な手段だと言えます。この場合、外部の専門家へサポートを依頼することで、短期間で高い効果を期待できるため、プロへの相談がおすすめの選択肢になります。
当社はこれまでの多くのクラウド開発を支援してきた知見を活かし、クラウドを活用した内製化に取り組まれるお客様を全力でサポートします。以下のような課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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貴社の状況に合わせて、体制づくり支援や開発計画支援、クラウド開発スキルアップ支援など、様々な支援メニューを提供しています。無料相談も可能なため、まずはお気軽にご連絡いただければと思います。