業務の属人化は、多くの企業にとって身近な課題だと言えます。しかし、業務が属人化することで、様々なリスクが発生することをご存知でしょうか?
本記事では、エンジニア業務の属人化の概要やリスク、要因などに加えて、属人化を回避するためのエンジニア育成のポイントを解説します。自社でエンジニア育成を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
業務の属人化とは?
業務の属人化とは、業務やタスクが特定の個人に過度に依存している状況を意味する言葉です。業務が属人化することで、担当者が休暇を取得した際に業務のフォローができないなど、様々なリスクが発生します。
特に、専門性の高いエンジニア領域では、業務の属人化が起こりやすい傾向にあります。これは、日本が慢性的な IT 人材不足であり、エンジニアをはじめとした専門職の一人あたりの業務量が多くなるためです。
その結果、特定のエンジニアに様々な業務が集中してしまい、業務の属人化に繋がります。一般的には「一人情シス」という言葉が頻繁に使われますが、この一人情シスも業務属人化の典型的な例だと言えます。
企業が安定した経営を持続するためには、特定の個人に依存するのではなく、組織全体で効率的に業務を進められるような体制づくりが求められます。このような観点からも、業務の属人化は、企業が回避すべき由々しき問題であると言えるでしょう。
業務属人化によるリスク
業務属人化が発生することで、ビジネスにどのような影響を与えるのでしょうか?本章では、業務属人化による代表的なリスクを 3 つご紹介します。
業務量の個人差が大きくなる
業務が属人化することで、特定の担当者に様々なタスクや業務が集中します。その結果、 ES ( Employee Satisfaction :従業員満足度)の低下に繋がり、最悪の場合はエンジニアが離職してしまうリスクもあります。このように、業務量の個人差が大きくなることは、企業にとって避けるべき重大なリスクであることを覚えておきましょう。
業務のフォロー体制が整備できない
業務が属人化すると、業務のフォロー体制を整備することが困難になります。なぜなら、業務やタスクが特定の担当者に偏ってしまい、他の人が業務内容を把握できないためです。
そして、仮に担当者が休暇を取得した場合、他の人がフォローすることができず、業務に支障をきたす可能性が高まります。特に、エンジニア業務は自社システムの保守・運用などを担当することも多く、最悪の場合はシステム停止に陥る可能性もあるため、この点は業務属人化の大きなリスクであると言えるでしょう。
ノウハウが会社ではなく個人に蓄積される
本来、業務のノウハウは組織全体で共有すべき貴重な財産ですが、業務属人化が起きると特定のエンジニアが一人で仕事を進めるため、その担当者のみにノウハウが蓄積されます。
その結果、会社にノウハウを蓄積し、組織全体で共有することが困難になります。この状態では、担当者が退職した際に業務を継続することが難しいため、会社は大きなリスクを背負うことになります。
エンジニア業務が属人化する要因
ここまで、業務属人化の概要や具体的なリスクについてご説明しました。それでは、なぜ業務属人化が発生するのでしょうか?
本章では、エンジニア業務に焦点を当てて、業務属人化が発生する要因を解説します。
業務属人化に対する危機意識が低い
エンジニア業務が属人化する要因として、エンジニア業務の属人化に対する危機意識が低い点が挙げられます。 IT 人材の不足により、特定のエンジニアが多くの業務を担当することは珍しくありませんが、エンジニア業務は社内システムの保守・運用を行う重要なものであるため、属人化によるリスクは非常に大きいと言えます。
業務やオペレーションがルール化されていない
業務やオペレーションがルール化されていないことも、エンジニア業務の属人化に繋がります。ルールが存在しない場合、特定のエンジニアが過去の経験や自身の判断に頼って仕事を進めてしまうため、他の人が業務をフォローしたり、後から内容を把握したりすることが困難になります。
社内システムがブラックボックス化している
システムのブラックボックス化とは、システム構造が煩雑で他の人が中身を理解できなくなることを意味します。特に、システムを何度も複雑にカスタマイズした場合、そのシステムはブラックボックス化しやすい傾向にあり、システムを構築した本人以外がシステム構造を把握することが困難になるため、業務属人化を引き起こす一因になります。
属人化を回避するためのエンジニア育成のポイント
属人化のリスクを理解させる
会社として属人化を回避するためには、エンジニア育成の段階で業務属人化のリスクを理解させる必要があります。エンジニア業務は自社システムの保守・運用に関わる重要性の高い仕事であるため、業務属人化の危険性を十分に説明し、これを回避できるような仕事の進め方を教育してください。
業務のマニュアルを作成する
エンジニア業務の属人化を回避するためには、業務マニュアルが有効な手段になります。エンジニアが自己判断で業務を進めることがないように、エンジニアの教育と並行して業務・オペレーションの作業手順をマニュアルなどにまとめ、誰が対応しても同じパフォーマンスを発揮できるような仕組みを構築してください。
社内システムを分かりやすく整理する
前述した通り、システムのブラックボックス化はエンジニア業務の属人化に直結するため、極力シンプルなシステム構成にしたり、カスタマイズ内容を資料にまとめたりするなど、ブラックボックス化を回避するための工夫が必要になります。エンジニア教育を行う際は、社内システムを整理しながら作業を進めるように指導すると良いでしょう。
外部企業のサポートを活用する
エンジニア教育を行う際は、外部企業のサポートを活用することも有効な選択肢の一つになります。専門家に依頼することで、効率的にエンジニアとしてのスキルアップを実現できることはもちろん、業務属人化を回避するための工夫やマインドを学ぶことも可能です。外部企業へ依頼する場合は一定のコストが発生しますが、先行投資と捉えて前向きに取り組むことが大切です。
属人化を回避するためのエンジニア育成の進め方
最後に、属人化を回避するためのエンジニア育成の進め方について具体的な 5 ステップで解説します。ぜひ、自社で取り組む際の参考にしてください。
Step.1 社員の意識改革
まずは、既存社員の意識改革を行うことが大切です。業務属人化によるリスクを全社員が理解できるよう、社内周知や勉強会開催など、あらゆる手段を用いて意識を変革してください。
この時、経営層などの協力を事前に得ることで、組織全体に対してトップダウンで意識を浸透させやすくなります。育成するエンジニアのマインドを醸成するためには、組織全体の風土・文化を事前に整備することが重要であるため、社員の意識変革は欠かせないステップになります。
Step.2 社内システムの整理
社員の意識改革が終わったら、次は社内システムを分かりやすく整理します。せっかくエンジニアを教育しても、システムが整理されていない状態では、業務が属人化する可能性が高まります。
自社が利用しているシステムの一覧表を作成して、どのようなシステムを何の用途で活用しているのかを見える化してください。これにより、育成するエンジニアが自社システムの全体像を把握できるようになり、業務属人化の回避に繋がります。
Step.3 エンジニア業務の棚卸
社内システムの整理が完了した後は、エンジニア業務の棚卸を実施します。エンジニアが対応すべき業務を整理し、誰が見ても分かりやすい形でまとめてください。
これにより、エンジニアが具体的な作業イメージを持った状態で研修に臨むことができ、自社にどのような業務が存在するのかを把握できます。多くの事業会社では、業務プロセスが複数工程に分かれていることが多いため、なるべく細かい粒度で業務を整理することが大切です。
Step.4 業務マニュアルの作成
エンジニア業務の棚卸を実施したら、それらの業務を行うためのマニュアルを作成します。他の人が対応しても同じアウトプットが出せるよう、作業手順に沿って丁寧に作成することが重要なポイントです。
また、作業プロセスだけをマニュアルに記載するのではなく、業務を進める上でのノウハウや注意点を補記することで、マニュアルの質を高めることができ、業務のパフォーマンスをより向上させることが可能です。
Step.5 エンジニアへの研修
業務マニュアルを整備した後は、そのマニュアルに沿ってエンジニア研修を行います。一方的な説明にならないよう、エンジニアからの質問・意見を拾いながら、コミュニケーションを重視して研修を進めてください。
なお、エンジニア研修は一度実施して終わりではなく、何度も繰り返すことで効果を高めることができます。業務属人化を回避するためにも、現場に入ってから 1 ヶ月、 3 ヶ月、 6 ヶ月など、一定の周期で再度研修を実施することをオススメします。
まとめ
本記事では、エンジニア業務の属人化の概要やリスク、要因などに加えて、属人化を回避するためのエンジニア育成のポイントを解説しました。
エンジニア業務が属人化することで、業務のフォロー体制が整備できなかったり、会社にノウハウが蓄積されなかったりするなど、企業は様々なリスクを背負うことになります。この記事を読み返して、属人化を回避するためのポイントを理解しておきましょう。
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本記事を参考にして、業務属人化を回避するためのエンジニア育成に取り組んでみてはいかがでしょうか?