昨今、 デジタルトランスフォーメーション(以下 DX と記載)が大きな注目を集めています。 DX とは、デジタル技術を駆使した抜本的な企業変革を意味する言葉であり、現在多くの企業が DX の実現に向けて様々な取り組みを行っています。
従来、 DX は外部企業のサポートを受けながら推進することが一般的でしたが、最近では自社のみで DX を完結させる「 DX 内製化」に取り組んでいる企業も珍しくありません。しかし、 DX 内製化を実現するためには、様々な課題や注意点が存在し、重要なポイントを理解していないままプロジェクトを進めた場合、思うような効果を得ることは難しいでしょう。
本記事では、 DX 内製化の基礎知識に加えて、 DX 内製化における課題や注意点、具体的な失敗事例などを一挙にご紹介します。自社で DX 内製化を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
なお、 DX 内製化について理解するためには、前提知識として DX の基本を知っておく必要があります。 DX に関しては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご確認ください。
関連記事:DX (デジタルトランスフォーメーション)はもう常識?!あらためてDXをわかりやすく解説するうえ、成功させるためのポイントや成功事例までをご紹介!
目次
DX の内製化とは?
まずは、「 DX の内製化」という言葉の意味について理解しておきましょう。
DX の内製化とは、システムの開発・運用などを外部へ委託せず、自社のリソースだけで DX を実現することを意味します。
DX は組織全体で取り組む大規模なプロジェクトであり、様々な IT システムやデジタル技術を活用して、自社の生産性向上やビジネスモデルの変革などを目指します。そのため、自社の工数を削減する目的で、システムの開発・運用などを外部企業へ委託するケースも珍しくありません。
しかし、外部委託を行うためには、当然ながら委託コストが発生します。また、作業を外部へ任せることは自社の工数削減に繋がりますが、その一方で、知識・ノウハウを自社に蓄積できないというデメリットが存在します。
このような背景から、 DX の内製化に舵を切る企業は一定数存在します。内製化を行うことで、コスト削減やノウハウ蓄積などを実現できるため、そのメリットは大きいと言えるでしょう。
内製化に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:システム内製化とは?失敗要因や成功させるためのポイントを徹底解説!
関連記事:システム内製化のメリット・デメリットとは?実現するためのポイントを紹介!
内製化を促進するため企業様向け資料
DXを推進するための一つの手段として内製化がフォーカスされています。
内製化に取り組もうと思われている方々を対象に、なぜ内製化なのか、内製化の理想と現実、それを踏まえた内製化を始めるポイントをお話しします。また、実際に弊社が行った内製化支援において成功されている顧客事例をご紹介します。
DX 内製化における課題
昨今、多くの企業が DX の内製化に取り組んでいますが、思うようにプロジェクトが進まないケースも珍しくありません。本章では、 DX 内製化における代表的な課題についてご紹介します。
DX 人材が不足している
DX 人材とは、 DX を推進するためのスキルを有した人材のことであり、
- 能動性
- プロジェクトマネジメント力
- 革新的なアイデア性
- IT ツールの利用スキル
- データ活用のスキル
など、 DX 人材には様々なスキルが求められます。
しかし、これらのスキルを保持している優秀な人材を確保することは困難であり、 DX 人材の不足が企業の DX 内製化を阻む要因の一つとなっています。
DX の目的・方向性が定まっていない
DX はそれ自体が目的ではなく、何かを実現するための手段に過ぎません。しかし、目的や方向性が定まっていない状態で DX に着手してしまう企業も一定数存在し、この場合、プロジェクトが思うように進まない傾向があります。
このように、 DX の目標設定や方針が不明瞭であるが故に、企業の DX 内製化が停滞してしまうケースは珍しくありません。 DX や DX 内製化の目的をはじめに明確化することが成功への近道になるため、時間をかけて慎重に検討を進めてください。
システム・アプリケーション開発の難易度が高い
DX 内製化を実践する場合、システムやアプリケーションの開発に関しても自社内で完結させる必要があります。しかし、これまで開発を外部委託していた企業にとっては、システム・アプリケーション開発の難易度が高いと感じてしまうこともあるでしょう。
例えば、既存システムと新しいデジタルソリューションの統合や互換性の問題、データの統合・管理、セキュリティ保護の複雑さなど、あらゆる要素を考慮しなければいけません。また、レガシーシステム(老朽化・複雑化した昔ながらの古いシステム)を使っている企業においては、自社開発の難易度はさらに高くなります。
このように、システム・アプリケーションの開発がネックとなり、 DX 内製化が前に進まないケースも多く存在します。自社の既存システムを分かりやすく整理したうえで、効率的に開発を進められるような環境整備が必要不可欠だと言えるでしょう。
DX 内製化の失敗事例
次に、某 IT 企業における DX 内製化の失敗事例をご紹介します。
同社では、既存顧客の満足度向上を実現するため、新たなサービス開発を目的に DX の内製化プロジェクトを立ち上げました。抜本的な企業変革を自社内で完結するため、各部署から総勢 100 名のプロジェクトメンバーを集めて、急ピッチで準備を進めたのです。
しかし、メンバー全員が日常業務と並行して内製化プロジェクトを担当していたため、通常業務に忙殺されてプロジェクトに稼働を割くことができませんでした。また、突貫工事のようにランダムに結成されたチームであり、メンバーがシステム開発に関する知見を持っていないことも大きな課題となっていました。
その後、内製化プロジェクトを推進するために DX 人材の中途採用を始めましたが、思うように応募者は集まらず、既存メンバーのみでの対応を余儀なくされました。その結果、内製化プロジェクトは頓挫してしまい、サービス開発の領域は外部委託を継続するとの結論に至りました。
このように、 DX 内製化を目指したものの、事前準備の不足によりプロジェクトが失敗した事例となっています。 DX 内製化を進める際には、中長期的な目線を持ち、全体計画を立てて段階的にプロジェクトを進めていくことが重要だと言えるでしょう。
なお、 DX 内製化の成功事例については以下の記事でご紹介しています。
関連記事:事例から考える DX 内製化の課題と成功のポイントとは? 7 つの成功事例を一挙にご紹介!
事例から考える DX 内製化を進める際の注意点
最後に、 DX 内製化を進める際の注意点について解説します。先程ご紹介した事例の内容を踏まえて、注意すべきポイントを記載していますので、自社で DX 内製化に取り組む際の参考にしてください。
専門のプロジェクトチームを結成する
DX 内製化を推進する際には、内製化のみを担当する専門のプロジェクトチームを結成することが大切です。先程の事例では、メンバーが日常業務と並行してプロジェクトを進めてしまったため、通常業務に忙殺されてプロジェクトを前進させることができませんでした。内製化プロジェクトを促進するための必要人員数を算出し、入念に事前準備を行ってください。
適切なスキルセットの確保と人材育成
先程の事例では、メンバーがシステム開発に関する知見を持っていなかったことも失敗の一員となっていました。そのため、 DX 内製化を検討する際には、メンバーの頭数を揃えるだけではなく、各人のスキルセットを意識したチーム構築が重要なポイントになります。また、適切な人材を集めることが難しい場合には、自社内での DX 人材の育成も視野に入れて取り組むと良いでしょう。
なお、当社センティリオンシステム 大阪事業所では、クラウド開発のスキルアップ支援をはじめとした様々な教育支援メニューを提供しています。無料相談も可能なため、関心のある方は問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
段階的に DX 内製化を進める
先程ご紹介した事例では、 DX 内製化の全体計画を立てずに、急ピッチでプロジェクトを進めた結果、途中で内製化が頓挫してしまう形になりました。このように、いきなり全ての業務を内製化しようとしても、思うようにプロジェクトを進めることは難しいため、優先順位を付けて段階的に DX 内製化を進めることが大切です。まずは既存業務の棚卸を行い、重要度の高いものから順に着手していきましょう。
関連記事:DX 内製化に必要な事前準備とは?具体的な進め方を 7 ステップで解説!
ローコード・ノーコード開発を活用する
DX 内製化を検討する際には、ローコード・ノーコードの開発を活用することも重要なポイントになります。前述した事例においては、プロジェクトメンバーのシステム開発に関する知見がなかったことで内製化が停滞しましたが、誰でも簡単に扱えるローコード・ノーコード開発を活用していれば、結果は変わったかもしれません。
そして、ローコード・ノーコード開発を実現するためには、 IT ツールの活用が有効な手段になります。例えば、 Google が提供する AppSheet を利用すれば、開発作業をコードなしで進めることができます。ビジネスプロセスの自動化やマルチデバイス対応など、ビジネスシーンにおいて求められる機能が多数揃っているため、 DX 内製化を実践するうえでは心強い武器になると言えるでしょう。
リスク管理と品質保証
事例の中では出てきませんでしたが、 DX 内製化を進める際の注意点として、リスク管理と品質保証は確実に意識すべき重要なポイントです。外部委託の場合、システムの開発・保守やセキュリティ対策のクオリティは一定レベルに担保されていることが一般的ですが、内製化においては、これらをすべて自社で対応する必要があります。
リスク管理は事業継続において重要な意味を持ちますし、品質保証は顧客満足度に直結する大切な要素です。そのため、 DX 内製化を進めるうえでは、リスク管理と品質保証のプロセスを事前に確立することを意識してください。
まとめ
本記事では、 DX 内製化の基礎知識に加えて、 DX 内製化における課題や注意点、具体的な失敗事例などを一挙にご紹介しました。
企業が DX 内製化を実現することで、委託費の削減やナレッジの蓄積など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、プロジェクトを進める際の注意点や失敗事例の内容などを理解しておきましょう。
当社センティリオンシステム 大阪事業所はこれまでの多くのクラウド開発を支援してきた知見を活かし、クラウドを活用した内製化に取り組まれるお客様を全力でサポートします。以下のような課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
- クラウド活用を推進するための開発体制作りが進まない
- 既存資産をどのようにクラウド移行するか検討する知見が不足している
- 内製化するためのクラウド開発スキルを持った人材が不足している
- コスト削減の実現方法に悩んでいる
貴社の状況に合わせて、体制づくり支援や開発計画支援、クラウド開発スキルアップ支援など、様々な支援メニューを提供しています。また、リスク管理計画や品質保証プロセスの確立、クラウドのセキュリティ設定、ランニングコストの最適化など、あらゆる観点からお客様の DX 内製化を支援することが可能です。
無料相談も可能なため、まずはお気軽にご連絡いただければと思います。
本記事を参考にして、 DX 内製化に向けた第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?